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伊予鉄道唱歌

　伊予鉄道唱歌は1908(明治41)年、伊予鉄道20周年を記念して作られたものである。作詞は鉄道唱歌の作詞者でもある大和田建樹、作曲は同じく鉄道唱歌作曲者の中に名を連ねている田村虎蔵。
　戦後、四国で国民体育大会が開かれるに当たり、当時の景観に合うように越智水草により補作された歌詞も存在する。現在、伊予鉄道の公式Webサイトに掲載されている歌詞(部分)はこちらによるもので、同社の仕事初めの際に歌われているのも恐らくこの補作詞によるものであろう。補作後の全歌詞は「坊っちゃん列車と伊予鉄道の歩み(創立90周年記念出版)」に掲載されている。
　ここでは著作権保護期間を経過している原詞を以下に掲載しておこう。

1. 名も常磐なる松山の
   市街を中に取り巻きて
   葛の如く縦横に
   蔓さし延ばす伊予鉄道
   
   
2. 先ず乗り出す高浜の
   港の海の朝げしき
   艫を押し連れて出でて行く
   船は落葉か笹の葉か
   
   
3. 波なき水に影ひたす
   伊予の小富士の興居島は
   桃の産地の名も高く
   こなたにあるは四十島
   
   
4. 夏は賑わう潮あみの
   客もて埋む梅津寺
   過ぐればここぞ朝毎に
   魚市開く三津が浜
   
   
5. 浜の松原はや跡に
   なりて迎うる古町駅
   まぢかく仰ぐ勝山の
   城に昔ぞ忍ばるる
   
   
6. 伊予鉄道の本社ある
   松山駅の近くには
   市役所　兵営　女学校
   出で入る列車の数繁し
   
   
7. 間もなく渡る石手川
   左右の広き堤には
   枝さしかわす木々高く
   さながら自然の公園地
   
   
8. 立花出でて久米の駅
   名高き神社仏閣は
   日尾の八幡三蔵院
   四国霊場西林寺
   
   
9. 送り迎うる程もなく
   平井　田窪　打過ぎて
   片手の薬師浮島の
   社も後になりにけり
   
   
10. 津吉　上村松茸の
    産地と兼ねて音に聞く
    処はあれぞあの山ぞ
    秋は来て見ん打ち連れて
    
    
11. 終点駅の横河原
    おりて進めば讃岐道
    夏白糸を繰り出だす
    白猪唐岬滝近し
    
    
12. 立花駅に立ち戻り
    森松線に乗り換えて
    南に向かえば星の岡
    勤王義士の古戦場
    
    
13. 椿の森に神さび
    祭られ給う伊予豆比古
    立つや石井の大鳥居
    居ながらそれと拝み行く
    
    
14. 森松下るれば土佐街道
    伊予名産の一つなる
    雪より白き砥部焼の
    産地南に約一里
    
    
15. 郡中線は松山を
    出でて余戸駅　出合駅
    余戸には覆脱天神と
    日招八幡名も高し
    
    
16. 出合は石手　重信の
    二流出で合う処にて
    河原は白く水清く
    青きは岸の松林
    
    
17. 夏は涼みに秋は月
    柳の花の散る頃は
    鮎釣る人の影見えて
    景色ぞあかぬ四つの時
    
    
18. 松前の港　賑わいて
    妻も乙女も朝毎に
    いただき出ずる御用櫃
    売り行く魚は何魚ぞ
    
    
19. 松前の城は田の中に
    埋れて跡は知らねども
    しるきは義農作兵衛の
    誉れを残す墓所
    
    
20. 砂糖の出ずる地蔵町
    過ぎて下車する郡中の
    浜は五色の名も高く
    一望はてなきわたの原
    
    
21. 名残は残れど松山に
    帰りて城の西北を
    古町木屋町打過ぎて
    行けば道後の温泉場
    
    
22. 代々の帝の大行幸
    ありし歴史をいただきて
    浴室清く町広く
    天下に知らるる湯の験
    
    
23. 浴後の散歩試むる
    道後公園あたたかに
    春風木々を吹く時は
    満山さくら満地雪
    
    
24. 花の木の間に見渡せば
    ただ一幅の図となりて
    ながめやらるる松山市
    あれ見よ三津も興居島も
    
    
25. 湯の神社にも詣でたり
    いざ又汽車に打ち乗りて
    一番町に疾く行かん
    約せし友も待つべきに